2014年1月13日月曜日

経済改革か政治闘争か:失業者を生み出す中国国営企業、中小企業の不況

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レコードチャイナ 配信日時:2014年1月13日 10時0分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=81096&type=0

失業者60万人を生み出す河北省の鉄鋼大減産
=経済改革か政治闘争か


●鉄鋼、セメント、電解アルミニウム、ガラス板、船舶業の生産能力が過剰で稼働率はいずれも70%代前半にとどまっているとして、生産能力の淘汰が必要だと指摘しています。写真は中国首鋼集団。

 2013年10月15日、中国国務院は
 『生産能力過剰という矛盾の解消に関する指導意見
を提出しました。
 鉄鋼、セメント、電解アルミニウム、ガラス板、船舶業
生産能力が過剰で稼働率はいずれも70%代前半にとどまっているとして、生産能力の淘汰が必要だと指摘しています。

 簡単にまとめると、
 「おらが街にも産業を」
 「投資すればGDPが増えるべ」
という動機に突き動かされた地方政府によるチキンレース的投資の結果、需要をはるかに上回る生産能力が生み出されたというもの。
 そのの結果、過当競争となりどこの企業も業績が悪化するわ、むちゃな投資がこげつくわ、と大変な問題となっているのです。
 一時は太陽光パネル世界最大手だった中国サンテックの破綻はその象徴です。

 中国政府は本腰を入れてこの問題に取り組み始めたようですが、その中で河北省には過大すぎる任務が背負わされています。
 その背景には、単なる経済的判断ではなく、周永康(ジョウ・ヨンカン)一派潰しという政治的判断のにおいも漂います。

■過大な課題に顔面蒼白の河北省

 生産能力過剰はさまざまな分野にまん延しているわけですが、その中でも特にやり玉に挙げられているのが鉄鋼業。
 実は数年前にも生産能力過剰解消の指導を受けていたのですが、中古設備の改修などの名目でさらに生産能力を拡大させるなどの裏技を駆使。
 状態をさらに悪化させていました。
 というわけで、今回は今後5年間に8000万トン以上の削減という厳しい課題を突き付けられています。

 中でも全体のノルマの75%、6000万トン削減を押し付けられた河北省は顔面蒼白(そうはく)。
 12年連続で生産量中国国内トップとはいえ、生産量は昨年度で約2.86億トンですから、20%以上の削減になります。
 とはいえ、党中央の号令ですから従わないわけにはいきません。
 「一切の理由を拒絶する」と意気も高らかに宣言。
 唐山、邯鄲、石家庄の主要三都市を中心に6000万トンの削減に着手しました(新華社、10月29日)。

■河北省のカミカゼ式生産能力淘汰

 記事にも「鉄鋼は河北省の看板産業」とあるように、省内には下請け、孫請けまで考えると相当数の人間が鉄鋼産業で食っているはずなのですが、「一切の理由を拒絶する」と宣言しており、その辺りは無視する構え(新華社、12月17日)。

 「これほど多くの削減は経済に対して大きな損害となる。
 例えば、60万人もの配置転換と、社会保障養老金が毎年130億元余(約2200億円)が必要で、直接、間接税収557億元(約9600億円)に影響する」
と勇ましい。
 なお10月の記事では40万人、370億元(約6400億円)という数字でしたので大きく上振れしております。

 それもそのはず河北省ではなぜか国務院要求を大幅に超える1億トン削減の大目標を立てています。
 なぜいきなり言われた以上のことをやり出したのか。

 その背景を読み解くカギの一つに政績があります。
 生産能力過剰の解消は今後、政績に組み込まれることが決まったのです。
 中国の地方官僚といえば、8%成長という目標をぶら下げられたら10%成長してみせるというモーレツ指導者ばかり。
 削減が業績になると言われたらやはり目標以上に削りたくなってしまう側面がありそうです。

 また計算の結果、当初予想よりも影響が大きかったことも上振れ要因になったのではないかと思いますが、この雇用減、税収減をどう穴埋めするかの具体策については一切触れられていません。
 河北省のトップたる周本順(ジョウ・ベンシュン)書記は
 「経済失速は二の次」
 「GDPを犠牲にしてもこの件をしっかりやらねば」
と明言。
 生産量削減はやり遂げるが、その結果どうなるかは取りあえずわからんという豪快な態度が印象的です。

■経済的判断なのか、政治的イジメなのか

 生産能力過剰は中国経済の大きな問題の一つ。
 取り組みは必要不可欠ですが、しかしなぜ河北省にこれほどの課題が押しつけられたのか。
 その背景には政治的判断のにおいがします。

 というのも河北省は習近平(シー・ジンピン)に目を付けられた地域なのです。
 7月には党幹部の自己批判、幹部同士の相互批判を大々的に行う民主生活会のキャンペーンが展開されましたが、
 その嚆矢(こうし)となった河北省では、なんと習近平が4日間も居座り、幹部たちの自己批判、相互批判を監督しています。
 10月には大気汚染問題で、河北省首脳陣を叱責しています。

 この背景として考えられるのが周本順・河北省党委書記の派閥です。
 周本順は現在、逮捕間近と噂されている前中国共産党政治局常務委員・周永康(ジョウ・ヨンカン)の元秘書。
 周永康の側近たちが次々と逮捕されているなか、周本順には無理難題のイジメが降りかかってくる…と見えてしまうのは仕方がないところでしょう。

 この宿題をこなさないとまた難癖をつけられるとなれば、周もGDPを捨ててもやらなければいけないのでしょうが、残るのは大量の廃炉と失業者ということになります。

 繰り返しになりますが、生産能力過剰の解消はきわめて重要な課題です。
 とはいえ、雇用を奪うという意味でリスクがあるのも確か。
 お上の大号令でキャンペーン的にことを進めれば、大躍進のような悲惨な歴史の二の舞ともなりかねません。

◆執筆者プロフィール:水彩画(すいさいが)
中国政治ウォッチャー。ブログ「中国という隣人」を運営。葬式ウォッチなどクラシカル・スタイルの中国政治ウォッチを続けて、はや*年。不透明な中国政治を読み解こうと悪戦苦闘中。


 高学歴卒業者の就職難。
 都市生活農民層の「ネズミ族」化。
 国営企業の失業者増大。
 それに大気・大地・水などの環境汚染、不動産バブルなどが重なってくると、中国の今後はひじょうに見えにくくなる。
 「なんでもありの中国」
だから、何があっても不思議ではない国であることは分かっている。
 精神的な道徳感が希薄になってしまっているために、民衆は欲得で動くことになる。
 もし何かあったときは解放軍と同等予算を持つ武装警察が出動して抑えこむことになるだろう。
 その前に中国版KGBで事前に芽を摘んでしもうとするだろうが、果たしてこの当局と社会不満のせめぎあいはどうなるのだろうか。


レコードチャイナ 配信日時:2014年1月19日 12時37分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=81974&type=0

沿海都市の中小工場、人件費高騰や注文減少で前途は暗澹
=旧正月に前倒しで長期休業―中国


●15日、輸出製品メーカーが集中している中国の沿海都市で、注文の減少や人件費上昇などから例年より早く旧正月の長期休暇に入る工場が増加している。写真は浙江省の電気製品工場。

 2014年1月15日、ロイターによると、輸出製品メーカーが集中している中国の沿海都市で、注文の減少や人件費上昇などから例年より早く春節(旧正月、今年は1月31日)の長期休暇に入る工場が増加している。
 17日付で環球時報が伝えた。

 中国の輸出製品の50%以上を生産している珠江デルタや長江デルタでは、小規模な工場の多くがすでに春節の長期休暇に入っている。
 6週間にも及ぶ長期休暇を設定している工場もある。
 ある労働者は
 「すでに3分の1の労働者が帰省して、現地の商店やレストランの多くも休みに入っている」
と話す。

 中国政府は経済発展モデルを投資・輸出依存型から内需主導型へと転換を図るべく注力しているが、貿易が依然として経済のエンジンの役割を担っている。
 中国の主要輸出先である欧米市場には回復の基調がうかがえるものの、消費者ニーズなどにはまだ完全に反映されておらず、注文は増えていない。

 広東省東莞市の工場経営者は
 「現地の工場100カ所のうち、80カ所は経営が苦しい」
と現状の厳しさを語る。
 中でも特に状況が厳しいのは、建材業界やおもちゃ業界など労働集約型の産業で、注文の減少だけでなく、中国の人口構造の変化や内陸部で高収入の就業機会が増加したことにより沿海部へ出稼ぎに来る若者が少なくなっており、労働力確保も年々難しくなっている。

 専門家は「珠江デルタと長江デルタでは春節後に労働市場がさらに逼迫(ひっぱく)する可能性が高い。
 工場にとって最大の問題は注文の減少ではなく、労働力の確保になるだろう」と予測する。
 また、工場経営者は「給料が毎年20-30%上昇する一方で、労働者の数は減っていく」と嘆く。

 中国の工場25カ所と提携している海外メーカーの責任者によると、1月に入ると80%の工場で労働者の前倒しの帰省による労働力不足問題が発生している。
 労働者らは
 「いつでも戻ってこれる。この工場が雇ってくれなかったとしても、向かい側の工場が雇ってくれる」
と話しているという。




【劣化する人心と国土】