2014年1月21日火曜日

安倍首相の靖国参拝は戦略的な一手:八方ふさがりの日米関係

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●米軍普天間基地の移設は長年の懸案〔AFPBB News〕


JB Press 2014.01.21(火)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39716

八方ふさがりの日米関係
(英エコノミスト誌 2014年1月18日号)

日本と米国の関係は、中国の台頭と切り離せない。

 亜熱帯の海に臨む浜辺と珊瑚礁。
 海中では海牛目の珍獣ジュゴンがのんびりと海草(うみくさ)を食べている。
 そんな場所に、垂直離着陸機のオスプレイが耳をつんざく轟音を鳴り響かせて降りてくるところなど、とても想像できない。

 しかし、ここ沖縄本島東岸の名護市辺野古では、まもなく米国海兵隊の新しい広大なヘリポートの建設が始まるかもしれない。
 安倍晋三首相が2013年の年末に、沖縄県の仲井眞弘多知事から、辺野古で埋め立て作業を開始する正式な承認を勝ち取ったのだ。

■普天間移設と靖国参拝

 2012年に安倍首相が政権の座に就いて以来、日本政府は17年間にわたって米国との安全保障同盟の悩みの種となってきた問題の解決を期待して、沖縄の当局者に働きかけてきた。

 沖縄県民は長い間、極めて多数の米兵が狭い沖縄県内に集中しているという事実に憤慨してきた。
 1995年に10代の少女が3人の海兵隊員にレイプされた後、米国は最も評判の悪い普天間基地を、代替滑走路が建設されしだい、ただちに閉鎖することに合意した。

 その時に提案された代替地が、都市から離れた辺野古だった。
 ここには海兵隊の基地、キャンプ・シュワブがある。

 県知事を含め、沖縄県民はのちに、普天間基地の沖縄県外への完全移設を求めた。
 米国は、アジアの安全保障政策に欠かせない沖縄県内の基地を最終的に失うことになるのではないかと恐れた。

 「米軍が駐留していると、植民地にされているような気がする」
と、辺野古に近い名護市内に住む会社員のマツダ・カズヒコ氏は言う。
 だがその一方で、同氏は、多くの人々が基地からの収入に頼っていることも認める。

 この行き詰まりは、安倍首相が多額の政府資金と引き替えに仲井眞知事から着工承認を勝ち取ったことで打開されるかもしれない。
 安倍首相は2013年12月に、2021年まで毎年3000億円の沖縄振興予算を約束をしたのだ。

 もし打開できれば、日本の首相が成し遂げたことで、これほど米国を満足させるものはないだろう。
 日本では尖閣諸島、中国では釣魚島と呼ばれている沖縄県の島(日本の施政下にあり、中国が領有権を主張している)を巡って日本と中国の間で緊張が高まるにつれ、沖縄の戦略的価値は増大しているのだ。

 しかし、普天間問題で進展が見られたのとちょうど同じ時期の2013年12月26日に、安倍首相は東京の靖国神社に参拝するという決断を下した。

 靖国神社は、250万人の戦死者とともに、14人のA級戦犯の魂を合祀している。
 安倍首相の靖国参拝は、中国に格好の宣伝材料を提供し、米国の外交官が日韓の緊張を和らげようと懸命に働きかけていたにもかかわらず日韓関係の改善努力を拒否するという韓国の決定を正当化した。

 米国は「失望」を表明した。
 米国務省東アジア・太平洋担当次官補のダニエル・ラッセル氏は、安倍首相の参拝は
 「アジア地域に関する首相の見解と意向に疑問を抱かせ、日本の外交面での影響力を低下させるものだ」
と述べた。

 安倍首相は、米国との同盟強化のために採用しているほかの政策が、靖国参拝の影響を上回ると計算しているようだ。
 それは正しいのかもしれない。

 2013年に安倍首相が下した、米国主導の貿易自由化の試みである環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加の決断は、米国に強い印象を与えた。
 米国の政策立案者らは、安倍首相の野心的な日本経済再生プログラムも肯定的に評価している。
 最近まで米国側は、日本の緩慢な経済成長のせいで、戦略パートナーとしての日本の価値が低下していると苛立っていた。

■ホワイトハウスと安倍政権の微妙な関係

 米国防省は、日本の国防体系を洗い直そうとする安倍首相の政策を一貫して支持し続けている。
 国防省は長年、自衛隊の効果的な活動を阻む憲法などによる制約を緩めるよう日本に求めてきた。

 日本政府は今年、平和憲法の解釈を変更して「集団的自衛」を可能にしようと努力するはずだ。
 このように解釈が変更されると、日本は同盟国、主に米国が攻撃された場合に支援に出られるようになる。
 それは、両国の関係強化を狙う、日米防衛協力のための指針の来るべき改定の一部をなしている。

 それでも、限界はある。
 ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン氏は、ホワイトハウスと安倍政権との関係は微妙な状態だと言う。
 お互いに、相手が何をするか分からないと思っているからだ。

 日本政府は、アジアのほかの国の政府と同様、米国のアジアへの関与に関して懸念を抱いている。
 特に、オバマ政権が非常事態の際に進んで尖閣諸島の防衛に当たろうとするかどうかについての懸念は大きい。

 日本が防衛力のてこ入れをさらに推し進める可能性は高い。
 安倍政権は、敵のミサイル発射施設を先制攻撃する能力の獲得を検討すると述べている。
 こうした活動は米国の協力の下で実施されていくはずだが、それでもこの変化は、両国の同盟関係における日本側の影響力を高める方向に働くだろう。

■当面の注目は辺野古

 当面、注目は辺野古に集まる。辺野古に関しては、安倍首相が勝ち取った成果が地元の政治によって覆される可能性が依然として残る。

 1月19日の名護市長選挙*1では、辺野古への移設に反対し、優勢が伝えられる現職の稲嶺進市長の再選もあり得る。
 稲嶺市長は、市の条例により市長は建設を阻止する権限を有すると主張する。
 たとえ移設推進派候補の末松文信氏が勝ったとしても、移設に抗議する人々が建設を巡って中央政府を困らせる恐れがある。

 日米同盟はもうしばらく、小さな浜辺を巡る事態に捕らわれた人質の状態が続きそうだ。

*1=この記事が出た後の名護市長選では現職の稲嶺進氏が再選された

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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。


 日本は「オバマの裏切り」以降アメリカに信をおいていない。
 日本はアメリカに理解を求めることなく、どんどんと自国の動きを進めている。
 アメリカは今の日本にとって利用する相手でしかない。
 外国の評価を
1].信頼国
2].友好国
3].友人国
4].薄好国
5].敵対国
 と分ければ、アメリカは日本にとって信頼国から友好国にレベルダウンしたということである。
 これは同時にアメリカからみての日本も同じであろう。
 

ウォールストリートジャーナル  2014年 1月 22日 14:17 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702303572904579335721221681920.html?dsk=y

【オピニオン】安倍首相の靖国参拝は戦略的な一手

 この数週間、東アジアと米国の関心は物議を醸した安倍首相の靖国参拝に向けられてきたが、靖国参拝に批判的な人々は、安倍首相の見事な戦略的ゲームを見過ごしたのかもしれない。
 メディアや外国政府はともに、14人のA級戦犯が合祀された靖国神社への参拝を、安倍首相が右派の国家主義者であることの証拠のように扱った。
 だが、安倍首相は自らの保守主義を秘密にしようとしたことなどない。
 むしろ、昨年12月の参拝から見て取れるのは、
 日本の防衛能力と安全保障関係における具体的な収穫を得るためには、
 外交的な緊張を高めるというリスクを冒す価値がある
という安倍首相の計算である

 第一に、安倍首相は中国政府や韓国政府との関係改善に努めながらも、自らの外交と安全保障に関する目標を堅持した。
 韓国の朴大統領や中国の習国家主席は、昨年9月のG20サミットで安倍首相と非公式に短い会話を交わしたものの、公式な会談は断固として拒否してきた。
 さらに、中国は11月に東シナ海上空に防空識別圏(ADIZ)を設定した。
 これには領有権が争われている尖閣諸島周辺の日本のADIZと重なる部分もある。
 そうした過去1年の攻防を受け、
  安倍首相は見返りが明確な投資先が見つかる分野に自らのエネルギーを注ぐのが一番だと確信した
ようである。

 最も重要な収穫は日米同盟を強化させたことだった。
 決定的だったのは、安倍首相が米海兵隊用の新基地を沖縄に建設する承認をようやく取り付けたことである。
 この問題は、住宅密集地である普天間から基地を辺野古へ移設するという合意を民主党がひっくり返した2009年以来、日米同盟の火種となっていた。
 安倍首相はさらに、日本が他国と集団的自衛権を行使できるようにすることを求める有識者懇談会の報告書も発表した。
 これは、たとえば海上交通路(シーレーン)の安全確保にも適用され、米国政府が長年望んでいたものだ。

 第二に、安倍首相は日本とインドの関係を深めることに成功した。
 中国政府と韓国政府は安倍首相の靖国参拝を激しく非難したが、インド政府は安倍首相を今月26日の共和国記念日に行われる軍事パレードの海外からの主賓として招待すると発表した。
 これは今月6日に小野寺防衛相がニューデリーを訪問した直後のことだった。
 民主主義のパートナーとしても、中国への戦略的な拮抗勢力としても、日本にとってインドの存在感はますます大きくなっている。

 それと同じくらい重要なのは、日本が東南アジアに多額の援助を行っていることである。
 この地域の多くの国々も中国との領有権問題を抱えており、近年は中国からの圧力を感じている。
 安倍氏は首相に就任してからの1年間で東南アジアの全10カ国を訪問し、2兆円ほどの援助と融資を提供してきた。
 安倍首相の援助の明確な構成要素には、防衛面での連絡や協力を密にすることが含まれる。フィリピンなどもすでにこれを目指していた。

 国内では、安倍首相は引き続き、
 安全保障問題に関して日本を「普通の」国にする
ことに注力している。
 安倍首相は昨年、日本初の国家安全保障戦略を発表し、常設の国家安全保障会議を設けた。また、日本の防衛産業を孤立化させ、外国とのより緊密な防衛関係を阻んできた武器輸出の禁止についても見直す方向で進めている。

 安倍首相の計算は明確であるように見える。
 外交的な批判を甘受しながらも、
 安全保障態勢を具体的に改善するという戦略ゲームを進めているのだ。
 新たな基地という米国が欲していたものを提供した安倍首相は、米国からの批判も厭わず、軍の再編を通じて米国政府との連携を強化した。
 うるさく抗議してくる中国政府と韓国政府については
 自らの防衛計画をほとんど邪魔しない
ということもあり、意に介していない様子だ。
 靖国参拝は、安倍首相が実現を目指している日本が世界で果たす役割のより大きな方向付けの一環と解釈するのが最も的確だろう。
 石原慎太郎元東京都知事の有名な言葉を引用すれば、これは
 今日版の「ノーと言える日本」
なのかもしれない。

 ならば、近隣諸国や同盟国は何をすべきなのか。
 韓国の朴大統領には中国とのより緊密な連携を模索する用意があるようだが、アジアにおいて韓国の自然なパートナーは、同じように自由主義の国である日本だ。
 戦時中の韓国に対する残虐行為への後悔や自責の念をより完全に明確化するかどうかは日本次第だが、日本との関係改善のために過去の歴史から決別する方法を見出すことが韓国政府にとって長期的な利益になる。

 中国は自らの行動が日本国民の大部分を反射的な平和主義から逸らしてしまったことを理解すべきだろう。
 日本に対する中国政府の継続的な圧力と威嚇的な軍事力増強は、
 日米軍事同盟が着実に強化されているだけに、
 中国がさらに脅威を感じる方向に日本を押しやる一方である。

 米国はどうすべきか。
 米国政府は安倍首相の靖国参拝を快く思っていないかもしれないが、その防衛・安全保障目標のほとんどに賛同している。
 米国の外交政策がより繊細であれば、安倍首相の靖国参拝の意味を認識し、非難によって日本政府との関係をぎくしゃくさせずに済んだことだろう。
 2014年に重要となるのは、アジアの安定を維持するための米国の行動であり、
 関係国すべてが満足できる状態を維持するための外交的な試みではない。

By     MICHAEL AUSLIN
(マイケル・オースリン氏はアメリカン・エンタープライズ研究所の日本部長で、wsj.comのコラムニストでもある)



レコードチャイナ 配信日時:2014年2月1日 9時31分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=82683&type=0

安倍首相、米副大統領の忠告振り切り参拝
=「飼い犬が手を咬んだ」「安倍は本物の首相」―中国版ツイッター

 2014年1月31日、昨年末に安倍首相が靖国神社を参拝したことに関し、日本メディアは29日、参拝の2週間前にバイデン米副大統領が繰り返し安倍首相に自重するように申し入れていたと伝えた。

 バイデン副大統領の説得に安倍首相は、「参拝は国民との約束だ。いずれかのタイミングで行く」と述べたという。

 このニュースに、中国版ツイッターには多数のコメントが寄せられた。
 以下は、その一部。

●.「飼い犬に手を咬まれたな」
●.「中米で日本を叩こう」
●.「実は日本が最も恨んでいるのは原爆を落とした米国だ」

●.「もしもし米国さん、おたくの息子さんをきちんと教育してくださいよ」
●.「米国がすでに日本を制御できなくなっていることの表れ」
●.「米国は日本、中国は北朝鮮の面倒を見切れなくなっている」

●.「気概があるじゃないか。安倍首相を支持する」
●.「日本は米国から独立しなければならない」
●.「日本は日ごろ米国に付き従っているように見えるが、実は別の考えがあるのだ」

●.「安倍は本物の首相だ。米国にも反駁(ばく)できるのだから。中国なんか抗議しかできない」




【劣化する人心と国土】


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