2014年2月25日火曜日

中国:ニュースの焦点は「汚」と「腐」―どうする?官僚腐敗に<59歳現象>「定年だ、今でしょ、それっ」

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●「汚」や「腐」の問題を報道する中新網のトップ頁


サーチナニュース 2014-02-25 11:07
http://news.searchina.net/id/1525072

中国、ニュースの焦点は「汚」と「腐」―どうする? 人民の不満

 中国ではこのところ、広い範囲で続く深刻な大気汚染がニュースの焦点のひとつだ。
 一方で、政財界の「腐敗問題」もニュースサイトのトップ頁をにぎわせている。

 中国国営の中国新聞社が運営するニュースサイト「中新網」の25日午前10時半(日本時間)を見ると、

1].トップニュースは大気汚染の報道だ。
 「国土の10分の1以上がほこりに覆われ、本日も重度のスモッグが継続」との大きな見出しの下に、関連記事の
 「26日夜から弱まりはじめ消散」、
 「北京は5日連続で重度の汚染、緩和せず」、
  「屋外工作者『慣れたよ』」
などが並ぶ。

2].次の大きな見出しは「中央は第2弾として6カ所を巡視、5件の腐敗を摘発」だ。
 中国では地方の高官が汚職をすることが多いとされる。
 外部からの目が届きにくく、利益誘導を求める地元の業者などと結託しやすいことが理由とされる。
 そのため、習近平政権は中央で結成した査察団を地方に派遣する作業を続けている。
  関連記事としては「(習近平政権が発足した2012年秋の中国共産党)第18回全国代表大会以来、省トップクラス18人が調査対象に」などがある。

  中国では国会に相当する全国人民代表大会が3月5日に開幕する。
 また、政府の重要諮問機関である中国人民政治協商会議も同月3日の開幕だ。
 両会議は国政上、もっとも重要なイベントとされ「両会」と称せられる。
 そのため、3月上旬の「政治の季節」を間近に控え、習近平政権の姿勢を示す報道が続いている。

3].3本目のニュースはウクライナ情勢を紹介する国外記事だ。 
 新華社のニュースサイト「新華網」が力を入れる記事も、中新網とほぼ同様だ。
 トップページで最も目立つ見出しは「(中央政府)環境保護部:中東部98万平方キロメートルで大気汚染」であり、その下に並ぶ見出しでは「習近平が政治局会議を主宰」、「中央紀律委員会の第2陣の視察」の文字色を変えるなど目立たせている。  

 他のニュースサイトも、ほぼ同様の編集方針だ。
 **********  習近平政権による「腐敗撲滅」の動きは一定の評価は受けているものの、人々が現状に満足しているわけでは、決してない。
 むしろ「許しがたい腐敗はまだまだある」との見方が強く、人民の不満は決して解消していない。  
 環境汚染についても、人々の不安と不満は高まるばかりだ。
 腐敗の多発の根本は精神的土壌と社会構造の問題にある。
 取り締まりや綱紀の引き締めだけで根絶できると考える方が無理だ。

  李克強首相は「(中央・地方)政府の権限を市場に移行する」方針を明確にしている。
 「官」の権限を削げば、腐敗が発生する基盤が弱くなることはたしかだが、「腐敗撲滅」の面からみれば、どの程度の効果があるかは不明だ。
  中国の報道は、共産党の意向が強く反映される。
 「両会」が開催される3月上旬に向け、さまざまな取り組みや現状の紹介をする記事が増えているが、
 いずれも「根本的打開策」は示されていない。



サーチナニュース 2014-02-25 13:02
http://news.searchina.net/id/1525102

官僚腐敗に<59歳現象>―「定年だ。今でしょ。それっ」=中国

 中国政府系シンクタンクの中国社会科学院は24日に発表した「法治藍皮書(法治青書)」で、中国における腐敗事件には「59歳現象」が顕著と指摘した。
 公職にある者が定年退職を控え、「チャンスは今」、「それっ」とばかりに「手中にある権力をはばかりなく、汚職のために用いる」という。
 中国新聞社が報じた。

  現政権の「腐敗撲滅」への取り組みについては
「腐敗問題を回避していない」、「
党風の問題についてごまかしをしていない」、
「問題が発覚してから司法機関に引き渡すまでの時間、司法的処理の時間が短縮された」
などと評価した。

  「法治青書」は2013年における「反腐敗運動」を集中的に取り上げ、2014年の「運動」の進め方への提案を行った。
 2013年の腐敗問題の特徴としては「59歳現象」が鮮明と指摘。
   公職にある者が定年退職を控えたことで、不正に金品を得る「チャンスは今」、「それっ」とばかりに「手中にある権力をはばかりなく、汚職のために用いる」事例が多い状況は、中国共産党紀律委員会監察部が発表した、腐敗事件を起こした者の年齢分布で、
★.51-60歳の層が全体の53.7%を占める
ことからも明らかと論じた。
  さらに、事件を起こす者の高学歴化も目立つという。
★.大学院以上卒が48.8%、
★.大学学部卒が29.3%、
★.学歴不詳は22%で
「本人の自覚と学歴に比例関係はない」ことが明らかになった。

  また腐敗事件を起こした者の所属では、
★.党と政府機関が現在も多いが、
★.党や政府による事業体、国有企業、
★.その他の団体など
猛烈な勢いで広がっているという。

  同青書は、反腐敗運動を進めていく領域を司法、国有企業、医療、教育、科学技術研究、公共事業体などに広げていくべきと指摘した。
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 ◆解説◆ 
  中国では共産党や政府の上層部についての定年退職制度では、
★.閣僚や省などの共産党委員会書記の場合には満65歳、
★.「副職」の場合には満60歳
とされている。
 それ以下の地位の場合、
★.男性は満60歳、
★.女性は満55歳だ。
  なお、中国共産党中央政治局委員の場合、1997年には党大会時に70歳以上の場合には同大会をもって引退、02年からは68歳以上の場合に引退することになった。

  中国では1980年代ごろになると、第1革命世代と呼ばれる古参幹部が極めて多いための、党・国家幹部の高齢化問題が目立つようになった。
 同問題の解決に着手したのはトウ小平で、自分を含めた老幹部を1982年から「党中央顧問委員会」に移して政策決定の第一線から切り離した。
   ただしトウ小平自らは、江沢民政権が成立後の90年代前半まで、政策や人事で極めて強い影響力を持ち続けた。
 江沢民元主席も2003年の主席引退後、強い影響力を保ち続けた。
 ただし総じていえば、国家の最高首脳陣にも「引退制度」を設けた中国は、世代交代が比較的スムーズに進行する体制になったと言える。

  ただし一方で、上記「青書」が指摘するように、不正を行う場合でも「人生設計」を考慮して「計画的」に行おうとするケースが目立つとの指摘もある。
 定年間際に不正に蓄財を行った場合、職を離れて監視が緩くなったとたんに海外に居を移すなどで、追及から逃げのびられる“チャンス”が高まると考えられる。

 中国では事故を起こしたトラックなどに対する
 「群集略奪行為」が多発すると問題になっている。
 法規やルールに違反しても「機会さえあれば、自分の物ではない物を自分の物にしよう」
とする行為の構図は、
 略奪行為でも官僚などの腐敗などでも同一、あるいは同根と言える。






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