2014年2月6日木曜日

中国の真の環境リスクとは「水」:毒霧・毒水・毒土を増産する中国エコ・シテイ

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ロイター 2014年 02月 6日 10:03 JST
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYEA1500P20140206

中国大気汚染にかすむ「真の環境リスク」


●2月4日、中国の大気汚染は目に見えて深刻だが、この問題への対処が、もう1つの大きな環境リスクである「水の問題」を増幅させる恐れがある。写真は黒竜江省・大慶で昨年10月撮影(2014年 ロイター)

[4日 ロイターBreakingviews] - By Katrina Hamlin
 中国の大気汚染は目に見えて深刻で、都市部の富裕層たちの悩みの種となっている。
 しかし、この問題への対処が、もう1つの大きな問題を増幅させる恐れがある。
 その問題とは「」だ。
 中国が本当に持続可能な成長を実現させたいなら、
 水を切望するエネルギー企業や消費者らに安い価格で供給するのをやめるべきだ。

 大気汚染の主因とされる石炭業界などには今、社会的な圧力がかかっている。
 石炭の絶対的消費量はなお増加しているが、新たな目標では、
 エネルギー源に占める石炭の相対的割合は2017年までに65%以下に低下する可能性がある。

 政府は、石炭を使用する製鉄所や発電所を大都市圏から移転させようとしている。
 この問題では、北京を取り巻く河北省に位置し、深刻な汚染源とされる老朽化した工業団地が特に注目されている。
 このほか、不純物が多い高硫黄炭に対しても、新疆や内モンゴルで産出される高品位炭と比較して批判が高まっている。

 厄介なことに、中国は比較的雨が少ない国だ。
 石炭関連施設は新型のプラントを含め、降雨の少ない北部の省に位置することが多い。
 石炭は多くの水を必要とする。
 使用前に洗浄が必要であるほか、石炭火力発電も通常は蒸気を使って発電する。
 都市部大気汚染の1つの解決策とされているのは、石炭から合成天然ガスにエネルギーを転換し、都市にガスパイプを通じて供給するという方法だが、
 世界資源研究所によると、これには通常の石炭火力発電所の12倍も水が必要になるという。

 スモッグが同国最大の「市民の敵」である一方、
 水不足に陥る可能性は身近な脅威とは捉えられにくいかもしれない。
 確かに、新規制では石炭火力発電所に水利用計画の提出が義務付けられるほか、当局は水道代の値上げを示唆しており、使い過ぎに罰則が科される可能性もある。
 しかし、水資源に関する権限は分散しており、水利部が使用を監視するのに対し、汚染や都市部の汚水処理は別の機関が監督している。

 問題の根源は、環境の持続可能性が重要とされていない点にある。 
 権力者は自分たちの体制の持続可能性、もしくは安価なエネルギー供給の持続可能性に関心が向いているようにも見える。
 長期的には、環境、体制、エネルギー供給の3つは全て結び付く。
 しかし、
 水不足が中国共産党の権威に直接的脅威とならず、
 安い石炭に依存する経済が続く限り、
 水問題は優先順位の低いまま放置される
だろう。

*筆者は「ReutersBreakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



WEDGE Infinity  2014年02月18日(Tue) 
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3518

空気汚染より深刻な中国の“水”問題

逼迫する水量に、汚染が深刻化する河川や地下水。
 北京をはじめ中国全土の水資源データが示す衝撃の事実

 「世界中にあふれる水不足の報道をすべて合わせても、
 北京がいま直面する水不足の危機的状況には及ばない

 2013年10月、こう発言して注目を集めたのは中国水科院水資源所の王浩所長である。
 この発言は決して誇張ではない。

 国連環境計画(UNEP)の基準では、
1].1人あたりの年間水資源量に準じて1700立方メートルを下回る水準を「水不足懸念」、
2].1000立方メートルを下回る水準を「水不足」、
3].そして500立方メートルを下回る場合には「絶対的水不足」
として分類している。
 中国では天津市、北京市、寧夏回族自治区、上海市、河北省、山西省、山東省、江蘇省の8省市自治区が「絶対的水不足」に含まれ、
★.なかでも北京市は、500立方メートルどころか、100立方メートルにさえ満たないのが現実なのだ。

 「12年を例にとれば、北京で消費される水の総量は年間約36億立方メートルです。
 このうち約7億5000万立方メートルの水(約20.8%)が、実は再生水によってまかなわれているというのが現実です。
 専門家によれば、少なく見積もっても毎年約15億立方メートルの水が欠乏していることになるというのですから深刻です」(北京のメディア関係者)

 観光で北京を訪れ、ホテルで蛇口をひねれば水は勢いよく流れ出すので、外国人が水不足を実感することはない。
 同様に北京で暮らす人々が日々の生活のなかで水不足を実感する機会は決して多くはない。

■慢性的な水不足に直面する北京

 それゆえに北京市民の水消費量は増える一方だ。
 北京市自来水集団の梁麗スポークスマンが公表した数字に従えば、13年7月31日、北京での水の供給量がそれまでの史上最高を更新し294万立方メートルに達したのに続いて、8月26日にはさらに298万立方メートルに達して記録を更新し続けている。
 北京市民の危機意識の欠乏ぶりには驚かされるばかりだ。

 だが、この裏側には、中央政府が躍起になり「綱渡り」とも表現される強引な引水によって
 各地から水をかき集めてきている実態がある。

 その象徴とされるのが、中国のなかでも比較的水資源に恵まれている南部の長江から、水がひっ迫する北部に水路を引く大事業、「南水北調」である。
  合計3つのルートによって結ばれる水路は、
①.すでに08年に1本目が開通し、河北省にある4つのダムに水が注ぎこまれて北京は焦眉の急を脱した
②.続いて10年には2本目が開通し、北京の人々は湖北省、河南省をまたいで注がれる丹江口ダムからの水によって多少の潤いを手にした。
③.そして、14年10月には3本目が開通して事業は完成となるのだが、それによって北京の水問題が解決すると考える専門家は1人もいない。


●水位が危険レベルまで下がった中国・湖北省の丹江口ダムを視察する温家宝首相(当時、2011年6月)(提供・Landov/アフロ)

 「南水北調によって北京の水の供給源となった丹江口ダムは、貯水量が不安定で、全体的に減少傾向が目立ちます。
 また、それ以前の問題として長江の水にも陰りが見え始めており、その貴重な水資源をわざわざ長い水路で運び、途中で大量に蒸発させていることも指摘されています。
 しかも、北京で消費される水のうち、地表の分が占める割合はいまや60%(再生水の分を除く)にまで落ちているのです」(かつて国務院の水行政に関わったOB)

 前出の梁麗スポークスマンによれば、
 北京ではすでに14年間もの間降水量の減少が続いた影響により、水の供給能力が目に見えて落ちている
という。

 その影響で、
①.永定河をはじめ域内を流れる21本の主要な河川が断流(水が海まで届かずに途切れる現象)となっていることに加え、
②.北京の最大の水の供給源であった密雲、官庁ダムという2つのダムの水量は3億8000万立方メートルでかつての4分の1にまで低下。
③.また北京市にある大小17のダムの貯水容量の合計は90億立方メートル強だが、12年の1年間は11億立方メートル前後の不足状況が続いた。

 水不足だけではない。
 北京の河川の汚染状況と中国全土の水問題の現状も深刻である。

 まず北京の地表を流れる河川の汚染状況だが、13年4月から5月にかけて、環境保護部華北督査センターが北京を流れる河川の調査を行っている。
 このとき対象となったのは全部で50の河川だったが、すでに水が枯れている9本の河に加え、サンプリングに適さないと判断された4本の河が除かれた上での調査の結果は、全37本の河川のすべてが環境保護部の定めた水質基準を下回ったというから驚きである。

■地方でも深刻化する水不足

 さらに全国の状況である。

 中国水利部が13年3月に発表した統計によると、中国では毎年約500億立方メートルの水が不足している。

 水資源量はざっと世界平均の3分の1程度だが、それに増して悩ましいのが、農地が集中する北部で水のひっ迫が顕著だということだ。
 北部地域において重要な水源と考えられている4本の河(黄河、淮河、海河、遼河)の水量は、この数年で約17%も失われてしまっている。

 これは各地方が競うように経済発展のための工場誘致や地場産業の育成に乗り出した結果として、工業用としての水の需要が高まったのに加え、生活水準の向上で1人あたりの水消費量が伸びたことが原因だと考えられている。

 「また、それ以前の問題として、水利政策の失敗が中国の河を傷つけてきたことに問題がある」
と指摘するのは、前出のOBである。

 「1950年代から60年代にかけて
 各地で乱立したダムが、それぞれの土地で重要な水源であった河川に深刻なダメージを与え
ました。
 結局それらは、水力発電に利用されることもなく老朽化し、いまや各地のお荷物になっています。
 それが中国全土に約8万7千基あり、
 そのうち約4万1千基のダムはすでに寿命とされる年月を経過してしまい、いまや決壊の危険にさらされています

 「流れをせき止めることで水流を奪えば、河が本来持つ浄化の力が奪われます。
 これが水源にとって大きな打撃になります。
 そして肝心のエネルギーにも使えず、逆に災害の芽を撒いてしまったのですから、ツケは大きいと言わざるを得ません」

 「現在、国と地方は協力して老朽化したダムの補修に当たっていますが、その数は中央が約1万5900基、地方が約2万5千基という途方もないものです。
 どのダムも工事が完成する15年までに大きな洪水などに見舞われれば大変な災害につながりかねないと危険視されています」(前出のOB)

 さらに深刻なのは、いまや水消費量全体の40%をまかなう地下水の問題である。99年から12年まで、地下水を汲み上げ過ぎた影響で、水位が毎年平均で90センチずつ落ちている。

こうした危機的な状況下にありながらも、前述のようにいまだ北京市民の日常生活のなかからは水不足の危機を共有するような変化が感じられない。その事実が水資源保護に関わる専門家たちの焦燥感をさらに煽っている。

 騙し騙しなんとか水を手当てしてきた当局だが、もはや「最後の砦」ともいうべき地下水にまでその問題は及んできている。
河川から地下水へ  広がる水質汚染

 そのことを象徴していると考えられているのが、いま中国全土に広がる水質汚染の問題である。
 中国の深刻な水質汚染は、表面を流れる河川から土壌に広がり、ついには地下水の汚染にまで広がってきている。


●汚染のため緑色に染まった川の上を進むごみ収集の舟
(提供:Imaginechina/アフロ)

 地下水汚染がにわかに注目を浴びたきっかけは、山東省の1つの“盗排“事件だった。
 盗排とは汚染水をこっそり捨てることだが、企業自らが汚染水を捨てるのではなく、それを有料で引き取る非合法の企業が請け負い、夜中にこっそり川に捨てるというシステムだ。
 汚染水を排出する企業が自らの手を汚さないためさらに良心のハードルが下がり、問題を助長している。

 13年2月、山東省濰坊の企業が汚染水を地下深くに捨てているという告発を受けて当局が調査に入った。
 これは、川に流す“盗排”よりも、さらに手の込んだ犯行の始まりだとネットでも大きな話題になった。

 こうした問題が積み重なり、13年10月、『時代週報』が伝えた記事によれば、中国農業科学院の研究者が09年に北京市平原区の322の観測地点で行った調査において、
 「比較的汚れている」及び「極めて汚れている」に分類された水源は実に41%にも及んだ
のである。

 この結果は北京から少し範囲を広げて行った調査でも、当てはまる。

 同じ時期、中国地質科学院水文環境地質環境研究所が公表した華北平原における地下水の汚染状況の調査結果では、
★.いまだ汚染されていない地下水は全体のわずか55.87%でしかなく、
★.44.13%の地下水はすでに何らかの汚染の影響がある
ことも判明した。

 中国では、もう何年も前から「いずれ飲み水がなくなる」という懸念が語られてきているが、公表されるデータのどれもがそのことを裏付けるような内容だった。

 いまや全国655都市のうち、400以上の都市で地下水が主な飲料水の資源であることを考えてもこの事実は衝撃だ。

 事実、11年に国土資源部が全国200都市で行った地下水の調査によれば、
★.「極度に汚染」と「やや汚染」の2つの項目に該当したのは全体の約55%で、
前年に比べて15.2%も増えていたという。
★.しかも、全体の37%に当たる地下水が、「地下水品質標準」に照らした“汚染”にあたる「Ⅳ類」と”重度の汚染”にあたる「Ⅴ類」に相当し、
すでに飲料水には適さないものだったのだ。

 中国はかつてロシアとの間で水の提供をめぐる協議を行ったこともあるが、エネルギー同様、国家の安全保障に深くかかわると断念した経緯がある。
 水の問題が”水の安全保障”とも呼ばれる所以だ。

 しかし中国の状況が憂慮されるのは、水不足という認識が有りながらも、一方でなお富裕層向けにゴルフ場が乱立し、高級マンションには「プール付き」の宣伝文句が躍っていることではないだろうか。

 持続可能性の指摘がなされるなか、中国の周辺国には
 「水を求めて中国が移動してくるのではないか」
という懸念が広がっている。
 なかでも深刻なのは中国の南進を恐れる東南アジアの国々である。
 その象徴とされるのがメコン川流域だ
 そうした国々は、中国の南進以前の問題として、もしチベット高原にあるメコン川の源流に中国が手を付けるようなことになればそれこそ死活的なダメージを受けるとの懸念を深めている。

 日本では中国人による水源の買収が話題だが、もとよりそんな規模で中国の水問題が救われるはずもなく、彼らの恐れはそんなレベルではないのだ。

◆WEDGE2014年2月号より

富坂 聰(とみさか・さとし) ジャーナリスト
1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。




サーチナニュース 2014-01-15 17:51
http://news.searchina.net/id/1521146

「見てくれ」ばかりのエコ都市建設で自然を破壊=中国

  中国では、「エコ都市」を実現するとして、人造湖や芝生などの建設に力が入れる都市が多い。
 しかし、水不足の都市を大量に使う施設を作るなど、何も考えずに「見てくれ」だけを整えようとするので、かえって環境を破壊している例があるという。’ 
 人民日報、中国新聞社などが報じた。

   記事が「北西地区のある都市」として紹介した例によれば、同市は「山と水の田園都市」を築くとして、市街地を流れる河岸に緑地や公園、健康広場などを設けた。
 市中心部には川の水を利用する人工水景を作った。
   市民の1人によると、市街地を流れる川には水がたっぷりとある。夜になれば照明がともる。
 その反射で、川面には光があふれる。
 確かに、河岸を散歩すると気持ちがよい。
 ところが、市街地の下流で川は急に細る。
 干上がってしまった川床も目立つ。

  北京大学景観設計学研究院の李迪華副院長によると、中国北部では水が不足している都市が多いが、そのような都市が人口湖を作る場合、湖底に防水処置をほどこす。
 都市部に人口湖を作れば、河川を流れる水がさらに減少し、湖底の防水処置のために、地下水の源がその分、絶たれることになる。

   東北師範大学地理科学学院の呉正方教授は、吉林省長春清が市内に芝生広場を作ったことを批判。
 現地の気象条件などにより、6月までは芝の成長期で、9月以降は枯れ始める。芝生広場を市民が利用できるのは7、8月のわずか2カ月だ。
 しかし夏の日中は暑すぎて、陽光が照りつける芝生広場は「市民憩いの場」にはならない。  
  しかも長春では春と秋に強い風が吹くことが多い。
 芝生広場はひどい土ぼこりの発生源になっている。
 中国北部では長春市以外にも、芝生広場を作る都市があるが、役に立たず、しかも水を大量に浪費しているとの批判の声が出る場合もある。
 
  「あとさきを考えないエコ都市づくり」の一例としては、街路樹の選定もある。東北地方の都市がエンジュを植える場合がある。
   北京などには見事なエンジュの街路樹があるが、エンジュが北京よりも寒い東北地方の冬を越すのは難しい。
 例年より厳しく冷え込んだ場合、春までにはエンジュがほぼ全滅という事態もあるという。
   李副院長は、自然条件を考慮しない都市整備を「偽のエコ」と批判。
 「広すぎる広場や水絡みの施設、実態にそぐわない緑地率の設定、人々が使いこなせない超大型の文化施設や総合施設は、間違った都市概念にもとづく」
と指摘し、行政の責任者による、「面子(メンツ)にこだわり、業績を示そうとするだけのプロジェクト」と喝破した。  
  李副院長は、都市建設にあたっては「人が何を必要としているか」から出発して考えねばならないと主張。
 例として、通勤に便利な交通網づくりを挙げ、
 「エコ都市づくりとは関係ないように見えるかもしれないが、実際にはマイカー通勤が減れば、エネルギー資源を大いに節約し、環境汚染を低減し、生活コストも引き下げることになる」
と説明。
 エコ都市づくりは、「見てくれよりも実質」と主張した。





【劣化する人心と国土】


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